2013年11月1日金曜日

Kepler Track -2- (10/17)

Day2:Luxmore Hut Iris Burn Hut 14.6km 5-6hours

この日が、私の人生の中で最も思い出深い日の内の1つとして刻まれることになるなんて、朝起きた時には思ってもみませんでした。
雨・雪はギリギリ止んでいましたが、空にはどんよりと厚い雲。風も相変わらず強い様子。7時台に出かけていく何人かを見送りながら、とりあえずの朝食。午後にかけて天気が回復傾向、という前日の天気予報を信じて、まずは身軽にHut近くの洞窟へ探検に行くことに。荷物がないと、こうも動きやすいものか…と実感します。10分ほど歩いたところにぽっかりと口を開けているのが、Luxmore Cave。入り口付近こそ木の階段がついていますが、そのあとはまったくの自然洞窟、もちろん照明もありません。奥行きは、1㎞以上に及ぶとか。ヘッドライトを頼りに、そこそこの水量のある流れを避けながら慎重に進みます。すぐに天井が低くなり、中腰からしゃがみながらの前進。いやー、この姿勢が膝にこたえることったら。。。なので私は入って20mほどで断念して地上へ。エミさんは一体どこまで進んだのやら30分ほど帰ってこず、心配になって様子を見に戻りかけたところで真っ暗闇から揺れる光が…。これから15㎞歩こうってのに、大したもんです。
Hutに戻って、軽く掃除をしたのち(シーズン以外は管理人がいないので、宿泊者の誰かがやるという素敵な暗黙の了解があるのです)1045分アタック開始。遅すぎると指摘されそうですが、ゆっくりスタートには理由が2つ。1つは、午後になるほど天気が回復する可能性があったこと。もう一つは、雪道歩行が予想されるコースだったので、なるべく多くの人に踏み跡をつけてもらおうという魂胆からです。
 

わずかに雲は薄くなって、眼下のテアナウ湖にもうっすらと日が差し込んでいます。が、登り始めから前日を上回る強風!!早々に、私のバックパックカバーが吹き飛ばされる事態に。そして、前方からは早朝にスタートしていたWesternの女の子2人が引き返してきます。聞くと、稜線上はcrazy windyな上にdeep snowだとのこと。うーん、Bad news…。でもまぁ、行けるところまで行ってみましょう。緩やかな登りが終わり、尾根を登り始めたところで、チャイニーズの女の子2人組を追い越します。この子たちは、驚くことにこれがNZ初めてのマルチデイ・トランピングなんだとか。いやー、それでよく、この時期のケプラートラックを選んだものです。(ってエラそうに言うほど、私も経験豊富なわけではないですけど。)高度が上がると、やはりトラックにも雪がかぶり始めます。概ね靴が埋まる程度ですが、所々膝まですっぽりな箇所も。雪に隠れてトラックも辿りにくく、前に進んだ人たちの足跡を頼りに足場の悪い尾根をひたすら登ります。その間もひっきりなしに吹き付ける横風に、ポールを突き刺してやっとバランスを保持することもしばしば。。。

この日に越えなければならない2つの高所のうち1つ目を超えると、さすがの景観が目に飛び込みます。が、いよいよ風の通り道に入ったのか、もはや恐怖を通り越して笑えてくるほどの強風にさらされます。格闘している相手が登り坂なのか、強風なのか、雪なのか、はたまた鼻水なのか()、わけがわからなくなってきます。
エミの帽子もどこぞへ飛ばされて、稜線上に設置された1つ目のshelterに到着したのが12時半。歩き始めて2時間弱とは思えないほどの濃厚な時間。ここまで来たら、引き返すという選択肢はないに等しく、もはや前進あるのみ。三角屋根にたたきつける強風が轟音を立てる中、20分ほどでサンドイッチのランチを済ませます。あまり休みすぎても体が冷えるので、勇気とやる気を振り絞ってケプラートラックの最高地点へ向け強風に身をさらします。
本来なら、ここからのコースはこのトラックのハイライト。細い稜線を進みながら、両側に広がる雄大な風景を楽しめる場所のはず…が、この日に限っては横からたたきつける風、足元はか細いトラックに滑りやすい雪というコンディション。せっかくの風景も漏らすまいと周囲に目を配りつつ、神経は最大限足元に集中です。予報通り少しずつ雲は薄くなり、写真だけ見ると“なんだ、いい天気じゃない”と言われそうですが、風は写真に写らない!!たまに座り込んでは草を掴んで耐える、立てるタイミングを見計らってじりじりと進む。この繰り返しです。
やっとのことでトラック最高地点(1400m)を超え、14:50 2つ目のシェルターに逃げ込みます。ここで、TeAnauの宿でも一緒だったドイツ人セバスチャンに追い付きました。“Hey, girls. よく頑張ったね!”と労われつつの小休止。が、休んだからと言って風が収束傾向に向かう保証はなく、セバスチャンが視界に入る範囲で進もうと10分ほどで戦闘再開です。見ると、シェルターでは余裕を見せていた彼も、強風と悪戦苦闘の様子。私同様バックパックカバーも飛ばされ、ひょろ長い体をダブルポールで支えては、横風にフラつきながらの進んでいく様は何だか後ろから見ていてちょっと愉快です。タッパがある分風の影響も大きいのか、むしろ私たちが距離を詰めて追い抜いてしまうという…。
 15:20 やっとこさ森林限界まで下りてきて、木の陰に隠れて久々に風の弱い中を歩きます。さっきまで横風に耐えすぎていたので、最初の内は体が右方向に傾いていきそうになります。木々には、Old Man’s Beard(おじいさんの髭)、日本名も長猿尾枷という面白いネーミングの地衣植物が寄生して、森をより幻想的な雰囲気にしています。空気のきれいな霧がかった森に生息する植物で、空気中の水分だけで光合成して生きています。

途中、崖崩れ跡や倒木を避けて通らなければならない箇所がいくつかありますが、それでもこれまでよりは大分進みやすい道です。十分に高度を下げてからは、このところの雨・雪で増水して激流となった川沿いに進み、Hut到着が16:50。このコンディションの中を6時間で歩き切ったのは、私たち的には金賞モンです。前日のHutで一緒だったメンバーが、一堂に驚いた様子で、でも温かく迎えてくれました。明らかにビギナーといった雰囲気の私たちがこのコースを超えてきたことが、信じられなかったご様子。が、上にはさらに上がいて、最初のほうで私たちがパスしたチャイニーズの女の子2人が、その3時間ほどあとにHutに到着!レンタルギア、初めての本格トランピングで、大金星☆…まあ、ひとつ間違えれば何か起きてしまっていたかもしれないと思うと結果論な気もしますが、ともかく無事に越えられてよかったです。

いやー、この日はよく眠れました☆

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