2013年10月15日火曜日

Ulva Island -Birds’ Sanctuary (10/11)

Stewart島のPaterson Inletに浮かぶ、長さ3.5㎞、260haほどの小さな島、ウルバ島1997年にネズミなどの天敵がいないことが宣言されてから、この島は鳥たちのサンクチュアリとして、本島で激減、あるいは絶滅してしまった鳥たちが手厚く保護されています。Stewart島でも十分に鳥の楽園だと感じましたが、こちらはさらに上を行きます。NZ固有種の植物群も、ほぼ手つかずで残されています。

定期便はありませんが、$2025程度でウォータータクシーを利用して往復することができます。ハーフムーン・ベイとは反対側の、ゴールデンベイという小さな船着場から出発です。片道10分ほどの距離ですが、そのタクシーも帰ってしまうので、迎えが来るまではこの無人島にいるのは私たちを含めて十数人のみ、というかなりわくわくするシチュエーションです。

島内にはトレッキングコースが整備されていて、23時間でぐるりと1周することができます。歩き始めてすぐに、鳥の楽園と呼ばれる所以を実感しました。すでにRakiuraTrackで鳥の気配に耳を澄ませる資質ができていたためか、数十mごとに鳥の姿に足を止める事態に…。日本野鳥の会メンバーかって…()
 Kaka
体長45㎝ほどになるオウム目インコ科のNZ固有種。絶滅危惧種に指定されています。
褐色の羽で覆われていますが、腹回りや翼の下面は赤い羽毛が生えています。雑食性で、嘴を使って上手に木登りをしながら、木の皮の下に住む昆虫やその分泌物、花や果実、種子を食べてます。主にペアで行動するが、非繁殖期には群れを形成することもあるそうな。

Tui
スズメ目ミツスイ科。人家の近くでもフツーに見つけられる鳥です。遠目ではただの黒い鳥に見えますが、よく見ると玉虫色に輝く毛艶の良い鳥です。花の蜜を吸うため、嘴は長く下に曲がっています。特徴は、首元の2つの白いボンボンと、その鳴き声。声量豊かに様々な声色を聞かせてくれます。目立つ鳴き声が示す通り、縄張り意識の強いやや攻撃的な鳥でもあるようで、絶滅危惧種の鳥だろうがおかまいなしに追っかけまわるちょっとKYな子です。

Kakariki(Red-crowned Parakeet)
オウム目インコ科。体長30㎝弱の細身の体ですが、あざやかな緑色の羽毛に、額の赤い色がよく映えます。木の実や土の中の虫を食し、巣も木の低い位置に作ります。かつてNZ全土に分布していましたが、人に狩られたり外来生物に捕食されたりで、その数を激減させ、絶滅危惧手前の危急種に指定されています。キキキという甲高い声で鳴き、マオリの例えで”Kararikiの巣のようだ”とは、ゴシップ好きのうるさい集団を指したりするそうな。

Torea(Black oystercatcher)
チドリ目ミヤコドリ科。写真が見にくくてすいません。その名の通りカキを食べてるのか知りませんが、主食は貝類やカニなどの小型甲殻類。長くて硬い嘴で殻を割って食べます。砂浜に巣をつくり卵を産むので、歩くときは要注意ですね。全世界的に見られる鳥ではありますが、個体数は1万羽前後まで減っていると言われており、北米では保護活動が始まっています。NZではまだまだのんびり暮らしているご様子でした。

Toutouwai(Stewart Island Robin)
スズメ目オーストラリアヒタキ科。スズメほどの小さな鳥。絶滅危惧種。ネズミなどが増えてしまったスチュワート島から、2000年に20羽がこの島に放たれ、手厚い保護活動の甲斐あって現在では200羽以上が生息しています。人のすぐそばまで寄ってきて、つぶらな瞳で見つめてくるかわいい奴です。というのも、人の踏んだ土から出てくる虫を食べるため。ちなみに、この仲間であるSouthland Robinは、クイーンズタウン内でもよく見かけます。


Korimako(Bellbird)
スズメ目ミツスイ科。NZのほぼ全土に生息する体長20㎝弱の鳥。その名の通り、よく通る高い声を聞かせてくれます。NZ最初の入植者キャプテン・クックも”まるで最も精巧な小さな鈴の音を聞いているようだ”と書き残しています。一時期、森林の伐採などで数を減らしたようですが、なぜだか近年はまた回復傾向にある、とWikiに書いてありました(笑)。


Stewart Island Weka
ツル目クイナ科。和名はニュージーランドクイナ。体長50㎝前後、Kiwiと同じで飛べない鳥です。褐色の羽と、地上生活に適した頑丈な脚を持ち、1㎞程度だったら泳げてしまうそうです。草地や藪を住処とし、昆虫や他の鳥の卵や雛を食べちゃったりもします。
写真は、まだ子供のウェカですね。灰色のフカフカな羽毛が体を覆っています。


Tieke(South Island Saddleback)
スズメ目ホオダレムクドリ科。黒い羽毛の背中部分だけが、saddle(馬の鞍)のように茶色いことが名前の由来。1900年初頭にはNZ本島から姿を消し、唯一の生息地Big South Cape Islandにも1960年代にネズミが入り込み絶滅の危機に瀕しましたが、素早い保護活動のおかげで難を逃れ、現在は19の島々で700羽ほどが確認されています。(危急種に準ずる準絶滅危惧指定)頑丈な嘴で木の皮を剥ぎ、その下の虫を食べます。飛ぶのはあまり上手ではなく、枝から枝へとジャンプして移動することがほとんど。
Kereru(New Zealand Pigeon)
ハト目ハト科。体長50㎝ほどに成長し、真っ白な腹側の羽毛と、緑~紫に輝いて見える背中側の羽毛とのコントラストが美しいです。主食は木の実。かなり大きな実を食べることができる唯一の鳥で、森にとって重要なサイクルの一翼を担っています。準絶滅危惧に指定され狩猟が禁止されていますが、Maoriの人々は伝統的に行ってきた生活を続ける権利を主張し、対立していると言います。


鳥たちだけでなく、生えている草木もNZ固有種の貴重なものばかり。恐竜より昔の時代からほとんど姿を変えていないもの、すでに絶滅したMoaという大型の鳥による捕食から逃れるためにひたすら背を高くしていったものなど、日本の山ではお目にかからない景色が次々と…。キョロキョロしすぎてトラックを何度も踏み外しました。。。
で、その名の通りの場所にあるWest End Beachで、澄み切った海を眺めながらランチタイム。

帰り道で、あれは絶対にKiwi!という後姿を目撃。写真は撮れなかったですが、ちょっとご紹介。
Tokoeka(Stewart Isaland Brown Kiwi)
キーウィ目キーウィ科。ニワトリ程度の大きさに成長します。夜行性で視力が弱く、昼間は樹の洞などに隠れ、夕方以降に餌を求めて歩き回ります。嘴の尖端に鼻孔があり嗅覚を頼りに昆虫や果実などを探して食べています。オスが巣作りや子育てをすることから、ニュージーランドでは家事に協力的な夫をキーウィ・ハズバンド (Kiwi Husband) と呼んだりもします。
Kiwiと一口に言ってもいくつかの亜種に分かれており、それぞれに生息数が異なります。この島のKiwiの仲間は2万羽ほど確認されており、危急種の指定を受けています。

*マオリの寓話*
ある日、森の王タネ・マフタは森の中を歩いていた。彼の子である木々はとても病んでいるかのように見えた。地面で暮らす虫たちによって食べられていたからである。あまりにも深刻そうであったため、彼は兄であり、空の王であったタネホカホカにこのことについて相談をした。「このままでは森が死んでしまう」と。
これを聞いたタネホカホカは空に住む鳥たちを一堂に集め、地上に降りて虫を食べて森林を守ってくる鳥を募った。 しかし、どの鳥も口を開くことはなかった。そこで、彼はテュイ、プケコ、ピピファロロアらに順に事を頼んだ。しかし、彼らはそれぞれの理由を述べ、彼の要請に応じなかった。そこで彼はキーウィに頼んだ。するとキーウィはこの王の要請に応じた。「参ります」と。
二人の森と空の王はこれにとても喜んだ。そこで、彼らはキーウィに確認をした。元来、キーウィは美しい羽毛、翼を持っていた。だが、地上で暮らすにはその翼を失い、強靭な脚をもつ必要がある、と。それでもキーウィは「参ります」と言った。これに対しタネホカホカは次のように述べた。「君の大いなる犠牲によって、君は森の中で最も愛される鳥となるだろう」
こうして、キーウィは今のような姿となり、王の要請に応じなかった鳥たちはそれぞれ罰を受けることとなった。

その昔、1872年にこの島に郵便局が建てられ、50年ほど機能したことがあるんだそうな。というのも、当時Paterson Inletの北岸に散在した製材所からこの島がよく見えたため、不定期にスチュワート島を訪れる運搬船の到着を一斉に知らせるのに適していたからとか。島には、この郵便局の建物跡(新たに家が建てられており、島の中でここだけが私有地になっています)や、到着を知らせるために旗を挙げていたポイントなどが残っています(右の写真)。 この郵便局の最初の職員だった男が筋金入りのナチュラリストで、彼の先見の明と尽力のおかげでこの島の自然がここまで守られた、みたいなことが書いてありました。

童心に帰りつつ、同時に心の奥底までリラックスすることができました。いい時間だった~。 

午後のフェリーでBluffへ戻り、Invercargillのバッパーに宿泊です。なぜか、エジプト仕様の部屋(笑)

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